未来を推論するスキャニング手法とアブダクション

自ら新しいビジネスモデルを創造するためには、未来を推論することが必要となる。
しかし、通常の市場の成長性から予測すると、線形的に変化する未来しか予測できない。
先端層と後発層の差を取り、全体が先端層になると予測することで未来を予測することもできる。(内挿法と言われる。)
例えば、今であれば若者だけでなく、全人口がスマホを使うと考えればどのような未来になるか?と考える方法だ。市場の成長性からの予測に比べると違った視点が得られるが、新しく出現する事象には対応できない。
そこで、東大i.schoolでは、スキャニングを用いたシナリオワークショップにより、未来を推論する方法論を提供している。

シナリオワークショップは、まず「既知の領域」から演繹される未来にありえそうないくつかの視点を導き出し、一方で「知らないということすら知らない領域」の「兆し」から機能的推論で仮説を作り、それを両側から挟み撃ちすることで予想を超える未来を捕まえることを試みる。

既知の領域から演繹する方法は専門家や著作物を読んで仮説(未来イシュー)を集めるが、兆しを集める方法は以下のスキャニングによって集める。

【スキャニングの手法】
  1. 今は小さな話題でしかないけれど、それが中心になると世の中にインパクトがありそうだと思われるニュースや視点がある。
  2. そういったスキャニングマテリアルを収100~200集する。
  3. その後、チームでピンとくるマテリアルやキーワード、共通点などを話し合う。
    それらを基にまとめた「未来の予兆」を文章化した20個程度の「アイデアマテリアル」を作る。
    それぞれのスキャニングマテリアルがはらんでいる「未来の芽」や「兆し」をくっつけたり、ばらしたり、比べたりしながら「予想を超えた未来の出来事」を想像し、それを文書化する。
  4. さらに、そろったアイデアマテリアルを基に3つの社会変化仮説(スキャニングクラスター)を作る。
この方法は、「デザイン思考の仕事術」で読んだアブダクションの推論法に近い。

アリストテレスは推論の方法を
アブダクション(Abducition、発想法)
インダクション(induction、帰納法)
デダクション(deduction、演繹法)
の3つに分類した。
規則を用いて個別を推論するのが演繹法。個別の事象を集めて、そこから一般論を取り出すのが帰納法。
でも、りんごの落下と太陽の地球の関係という事象を2つつなげてみても、機能法的な推論では重力という発想はでてこない。そのときに、ニュートンが使った推論がアブダプションというそうです。

これまで、利用されなかった思考法であるアブダプションは今後注目される発想法だろう。

参考
東大式 世界を変えるイノベーションのつくりかた
ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術

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